iVene’s diary

世界のクワガタ観察日記

デュブロンヒメヒラタクワガタの色々

 多数の孤島や諸島で構成される国、ミクロネシアは太平洋にある。そこにいるクワガタも特化していて面白い。しかし採集は困難である。

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ミクロネシア・チューク諸島ウェノ島のDorcus (Metallactulus) dublonensis Arrow, 1939:デュブロンヒメヒラタクワガタ。基準産地はデュブロン島。画像の個体は小型で、♀は頭部が少し奇形・片顎破損。とりあえず識別に困るような別種は見つかっていない。なお原産地は治安の問題で再調査は困難という話)

 ミクロネシアの絶海の諸島に分布がある事からサフル大陸の繋がりがあった頃に分化したろうと考えられる。緯度的にはインド亜大陸がユーラシア南端に接触したあたり、おそらく白亜紀末期〜始新世、あまり詳しくは特定出来ないが、その頃にインド亜大陸からスンダランドやサフル大陸の繋がった陸地を東へ移動したと予想する。近い地域に分布があるチビクワガタ類やネブトクワガタの仲間は、同じように移動したと考えられる。

https://sc888fba2c6537423.jimcontent.com/download/version/1619319712/module/13699480290/name/8-7.%20Coleoptera%2C%20Scarabaeoidea%20et%20al.pdf

(この報文中ではヤップ島産の"Metallactulus carolinensis (Arrow, 1939)"とした図示があるが、大まかな外見はデュブロンヒメヒラタに似る。図示個体は基準産地をポナペ島〜ヤップ島とされる"Metallactulus carolinensis"の担名タイプでは無いため詳細は不明だが、このヤップ島産はベニングセンヒメヒラタとは明らかに異なる。カロリン諸島は西にヤップ島、東にポナペ島、中間位置にチューク諸島がある。「"Metallactulus carolinensis"は"Metallactulus bennigseni Boilwau, 1910"のシノニム」とされている場合が多いが、其れは誤りかもしれない)

https://fanblogs.jp/anotherstagbeetlesofworld/archive/226/0

 しかし、こういう養殖もされていない判別にも困らない種群はデータの心配が無いので精神衛生上に良い。まぁ疑問があるなら"採集の神様"もよく言われるが「原産地に採集しに行ってこい」という話である。

http://www.inaturalist.org/observations/9864788

 調査不足の地域はこういうのが様々見つかっていたりするから感動が大きい。

http://www.inaturalist.org/observations/7781601

【References】

Arrow, G.J. 1939. The lucanid Coleoptera of the Caroline Islands. Annals and Magazine of Natural History (Series 11)4:579-582.

Boileau, H. 1910. Description d'un Lucanide nouveau. Bulletin de la Société entomologique de France 1910:340-343.

【追記】

 例えば"単なるお金で虫を集めるコレクター"の間で論争のある分類群があったとして、何か主張しようものなら「キミ"原採"してないよね。なんでそんな事言えるの?」みたいに突っ込まれるのがオチだから、大抵の人は論争のある虫を話題にしたくない。※"原採"とは"原産地での採集"を略された造語。

 人が虫に関わる一番最初は自然界であるから上流の作業である"原産地採集"は最も重要度が高い。重要度が高いからシビアな採集人はデータの正確性に拘る。国内採集をしていても外国僻地での事は全く分からないから未知産地開拓者は突き進む。

 データの場所に行っても誰も全く採集出来ないという場合、森林伐採で居なくなった理由以外にデータが間違いや改竄という場合もある。だから周辺地域などを調べる必要性は高い。

 あの知見が何か変、この知見も何か違和感、何故合わないのか判然としない、という混乱を自身で純度の高い作業をすれば真実を理解出来る事が頻繁にある。"大雑把な形"がデータを担保する事は無い。

 ABS問題の意義も商売人がアレコレやるほど優位性を帯びる。

 原産地にも行かず、実例と言えるだけの一次資料も使わず"机上空論*空理空論"で議論をするのは別に自由だが、"あらゆる無意味な結果論"に振り回されないように、他人の議論を聞くのは話半分くらいで良い。

 変な結果を誇示している人間というのは最初から資金繰りに困っていたり売名やなんとかで政治的論争が好きなだけで真面目に科学を考えてはいない。彼らは論争状態にある虫に不必要に首を突っ込みたがる。しかも彼らは自己言及性が全く足りない。傍目からして不毛味の多い論争は大体"盗賊団の内輪揉め"くらいに思っておいて良い。

https://twitter.com/terrakei07/status/1549667268665024517?s=21&t=8WNZ1EUC9PPbTo1wdLt6yA

机上空論

 頭で考えただけで、理屈は通っているが実際にはまったく役に立たない議論や計画のこと。

https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%9C%BA%E4%B8%8A%E7%A9%BA%E8%AB%96/

空理空論

 実際からかけ離れている役に立たない考えや理論。▽「空理」「空論」はともに、実状や現実を考えない役に立たない理論や議論。ほぼ同意の熟語を重ねて意味を強めた語。

https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E7%A9%BA%E7%90%86%E7%A9%BA%E8%AB%96/

 問題の多い時代ではあるが様々な説を一応は知っておきつつ、原産地採集など最初から自身でやってみれば何も疑問は無い。

https://twitter.com/kunperi/status/1550136277747777536?s=21&t=LPmUbOT9vYx836BdesjatQ