iVene’s diary

世界のクワガタ観察日記

リリプタヌスマメクワガタの色々

 オーストラリア大陸の広域にFigulus lilliputanus Westwood, 1855:リリプタヌスマメクワガタなる小型種が分布するとされる。黒い種の多いマメクワガタの仲間でも赤色になりやすい分類群。

 小さい故に"マメクワガタ"とは言われるがチビクワガタ属に分類され、亜属でグルーピングされる事もある。

 オーストラリア産Figulus属については、Monte氏らによる2016年に出された分類論文がある。多大なエフォートを感じさせてくれる良い論文でなかなか参考になると考えられる。

 論文で調べられたF. lilliputanus個体数は結構あるらしいが、20世紀初頭から100年近い期間中に少しずつ採集されたものを調べられたそうであり、各採集例を読む限りでは希少種らしい事が察せられる。論文外の採集例も少ない。マメクワガタのグループは分化も激しく、此のように採集例が疎らという事も多々ある。

 手持ちにあるF. lilliputanusは西オーストラリア産で典型的な形態を呈する♂個体。交尾器形態含め、論文に載るクイーンズランドウッドストック産の♂個体とかなり一致率が高い。

https://zenodo.org/record/166173

f:id:iVene:20230709205706j:image(西オーストラリア産♂個体。半世紀ほど前に採集されたもの。体長は約7.8mm。撮影は適当な顕微鏡写真)

 論文にもある通り基産地はアデレードでタイプは2個体あり、私も見た事があるが画像の個体みたく赤くて小さな個体群だった。iNaturalistでは生体も見られる。

http://www.inaturalist.org/observations/109822074

(南東オーストラリア産の生体)

http://www.inaturalist.org/observations/67346298

(西オーストラリア産の生体)

 しかしオーストラリア・クイーンズランド産で、似たような、しかしなんだか違うような♂個体が手元にある。黒っぽくて9.4mmと大きい。交尾器サイズも1.5倍くらい大きい(基本形態は同様)。しかし1♂ずつの比較だと判然とはしない。此れは何なのだろうか。

f:id:iVene:20230709233615j:image(オーストラリア・クイーンズランド産♂個体。外形に細かい欠損が幾つかある。体長は約9.4mm。昆虫種によって交尾器のサイズが特徴になっている場合もあるし、なってない場合もあるから今回の比較では分類を確定させられない。ほか色やサイズ以外にも脚部、頭部、複眼などで気になる形態差が見られるが、、)

 Bomans氏は1986年に"Figulus clivinoides Thomson, 1862"について有効種である可能性を提唱し、"F. lilliputanusは西オーストラリアと南オーストラリアの区域に分布する"とされた。クイーンズランド〜ニューサウズウェルズのマメクワガタは異なるかもしれないと考えたらしい。

“- Il n’est pas absolument certain que ces deux insects soient synonymes. L’examen des types permet de constater que le premier est nettament plus petit que le second, 6,2 et 7,5 mm pour 8 mm. De plus lilliputanus a été découvert en Australie méridionale et occidentale, et clivinoides ou du moins l’espèce la plus grande, en Nouvelle Galle du Sud et au Queensland

[It is not sure that the two species are synonyms. Examination of types shows that the first is clearly smaller than the second, 6.2 and 7.5 mm instead of 8 mm. Moreover F. lilliputanus has been discovered in southern and western Australia, and F. clivinoides , or at least the largest species, in New South Wales and Queensland].

(「Monte, Cinzia, Zilioli, Michele, Bartolozzi, Luca, 2016. Revision of the Australian species of Figulus MacLeay, 1819 (Coleoptera: Lucanidae). Zootaxa 4189 (3)」より引用)

 一方で2016年の論文では"F. clivinoides"のタイプ個体が調べられ、交尾器も"F. lilliputanusと変わらない"とありシノニムとされた。"F. clivinoides"のタイプ個体も小さく、色も褐色〜暗褐色。

 しかしBomans, 1986の考察は、New South Wales州とQueensland州にいる"最大種"がF. lilliputanusでも"F. clivinoides"でもない可能性も有る表現の文章になってある。

 2016年の論文ではF. lilliputanusの種内変異については"計測の欄に記述したもの"とされたが、交尾器のサイズ変異については記述が無い。一応体長について6〜10mmのサイズ変異があるらしい事は書いてあって、其れ以外には形態変異が無いような表現がなされる。赤っぽいF. lilliputanusは6〜8mmくらいのものしか私には見覚えが無いが、其の10mmの個体というのは如何なるものだったのか。

 それに近しい大きなマメクワガタで似たものは、手元にある謎の♂個体しか見た事がない。一応ニューギニア島オセアニア産マメクワガタ類で一致するものが無いか調べてみたが、現状では見つけられていない。ニューギニア島あたりはマメクワガタ類の種数が結構あるらしく、手元にも未記載の可能性がある個体群が複数あって難しい。。

Redescription. Measurements: size range (n = 165): TL: 6.0–10.0 mm; PL: 1.6 1–2.49 mm; EL: 3.41–5.43 mm; PW: 1.69–2.97 mm; EW: 1.74–3.0 mm.

Intraspecific variation. The specimens examined do not show significant morphological variability, except for the body size (see “Measurements” section).

(「Monte, Cinzia, Zilioli, Michele, Bartolozzi, Luca, 2016. Revision of the Australian species of Figulus MacLeay, 1819 (Coleoptera: Lucanidae). Zootaxa 4189 (3)」より引用)

 疑問に対する答えとしてMonte氏らの論文から読み取れる話は幾つか可能性があり、一つは著者らが「此のくらいの交尾器の差異では連続的で種差の根拠にはならない」と考えた可能性、或いは著者が「全個体の交尾器は観てないけど1種しかいない」と考えた可能性、または著者の全く感知しない分類群が存在する可能性など。論文を好意的に読むとすると、近似別種が存在する可能性が高まるが。。

 種によっては体サイズと交尾器サイズが比例的である場合と、そうでない場合があり、此の場合は私が行った比較では"体長条件が飛び抜けた大型♂個体の交尾器を1例しか確認出来ていない"ため、"種の変異内か変異外か"の判断を下せない。

 クイーンズランド産の赤っぽくて小さくF. lilliputanusらしきマメクワガタは他にも私的に観た事がある。つまり2016年の論文にある"F. lilliputanusが広域分布する"という話は蓋然性が高いと考える。

 しかし私の手元にあるクイーンズランド産マメクワガタ♂個体は交尾器サイズが明らかに異なり、大柄で黒っぽい。最初に見比べた時も"全くの別種かも?"と考えたくらいだった。

f:id:iVene:20230710003553j:image(「George Hangay and Roger de Keyser, 2017. A guide to stag beetles of Australia. CSIRO Publishing, Clayton South, Victoria, x + 245 pp」より引用。クイーンズランドには黒っぽいマメクワガタが棲息するらしい)

 外形でも幾つかの点で大きな差異が見られ、分類屋の友人に相談してみた。しかし"其れも地域差かもしれない"とのお答えをいただいた。私も友人もF. lilliputanus近縁個体群の実物を多数観れていない。とりあえず体サイズ等の条件の合う比較をしなければ分からない。しかし形態差の割に個体数が少な過ぎて分からない。F. lilliputanusは交尾器のサイズや外形が、連続的に変化するか否か等を調べなくてはならない。そのためには少なくとも8〜9mmの個体群が複数必要になる。

 2016年の論文を書いたMonte氏らは、如何なる観察をされたのだろうか。論文の記述のみでは"交尾器の種内変異"はそんなに無さそうに読み取れる。

 確かに自身で自己採集した日本国産チビクワガタも、交尾器形態の種内変異幅がかなり広かった。しかしF. lilliputanusの場合はどうなんだろうか。現状では結論は出しにくいが、其れでも面白い話である。

 オーストラリア産の昆虫類は規制が厳しい事もあるし、現地在住の研究家の再検討を待ちたい。

 様々な困難を抱えるチビクワガタ属は、だからこそ"どういう手法で分類すべきか"考えさせてくれる意味でとても良い分類群と思えたりする。

【References】

Westwood, J.O., 1855. Description of some new species of exotic Lucanidae. Transactions of the Entomological Society of London, Series 2, 3, 197‒221.

Monte, Cinzia, Zilioli, Michele, Bartolozzi, Luca, 2016. Revision of the Australian species of Figulus MacLeay, 1819 (Coleoptera: Lucanidae). Zootaxa 4189 (3)

George Hangay and Roger de Keyser, 2017. A guide to stag beetles of Australia. CSIRO Publishing, Clayton South, Victoria, x + 245 pp

Bomans, H.E., 1986. 50e contribution à l’étude des Coléoptères Lucanides. Notes synonymiques et diverses, et descriptions d’espèces nouvelles du genre Figulus MacLeay (1e partie). Bulletin de la Société Sciences Nat, 51, 7‒15.

Thomson, J., 1862. Catalogue des Lucanides de la collection de M. James Thomson, suivi d’un appendix renfermant la description des coupes génériques et spécifiques nouvelles. Annales de la Société entomologique de France, 4, 389‒436.

MacLeay, W. S., 1819. Horae entomologicae: or essays on the annulose animals. S.Bagster. London Vol.1 Part 1:1-160.

【追記】

 交尾器の比較というのは、"形態変異の可能性"が壁になってシンプルには考察が進まない事が多い。"あたかも明瞭な差異"でも1例では見極めにくいし、"微妙な差異"は個体数が必要な事も多い。サイズが特徴になっている種もあれば、なっていない種もある。♂交尾器はパラメレの縦横比率に特徴が有る種や無い種、♀交尾器でも輪郭の一部や立体的な形態に特徴が有る種や無い種など色々あって、慣れていても少々時間かけて観察比較する事が多い。全く同形態ならば悩むことは少ないが。。

 私の場合、分類に必要な作業としてクワガタムシ等の死骸群から交尾器を摘出する為に便利な道具を自作してたりする。単純に作業スピードと精密性を効率良くする為に作ったオリジナルの道具で、設計については友人達にすらも全く教えていない。

 特に急ぐ必要も無い人達にとっては不要な道具とも言えるのだけれど、"技術的な発明"はこういう将来的にロストテクノロジーになってしまうような専売特許的な使い方も、特段倫理観に反してなかったり危険ではない合理的な技術ならば自由に発明してみても問題無いと考えられる。

https://www.newsweekjapan.jp/youkaiei/2018/12/post-29_1.php

https://www.webchikuma.jp/articles/-/2478

 しかし技術的な事はなかなか難しい事があって、例えば結構大きなメーカー企業が"独自の技術を流出させないために"と、重要な情報を隠してある場合がある。其れが致命的な悪影響になって実験が進まなくなる研究も沢山あるので、研究室によっては「研究に差支えるような問題のあるメーカーからは一切何も買わないように」と指令が下る事も少なからずある。そういう商品で成立してしまう需要もあるので世の流れにおいて仕方ない事である。

https://ameblo.jp/typam/entry-12578099813.html

 メーカーのみならず技術流出は確かに死活問題だから一概には責められないが、其の対策が過失的な原因になって研究の害になる事もある。しかし技術流出で大変な事になる事もある。様々な資材・試薬に商売が関わる以上そういう落とし穴の影もあるから注意しておかねばならない。

https://www.sakura-clinic.jp/blog/2018/02/21/2381/

、、、、

 科学分野は物理学から生物学などと広くあるが、絶対に欠かせない手順や考察というのが、どの分野でも必ずと言って良いくらいある。昆虫類の種・亜種分類ならば交尾器形態や分布状況、また科学的に考えるならば関わる各現象の特徴及び変異幅と其の相関の考察は絶対に欠かせない。

 虫業界等が抱える様々な問題等は、最先端の科学分野でずっと昔にも似たような問題があって、科学の世界ではそういう問題への対策が概ね練られてある。

https://twitter.com/salamandrella/status/1667168037156315136?s=46&t=6MVYq5Ovmu_MXJ16l5mXpw

 有名人の口車に感化されて擬似科学を盲信する人達も出てきてしまうため、研究室によっては「商業的過ぎる人間は有名人でも信用しないように」と指導される事もある。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25988540S8A120C1000000/

 偽証によって大被害を出した例というとやはりルイセンコ農法が最も典型例だろうが、ルイセンコを持ち上げたソ連は、ロシアの今になっても世界的な遺伝学者をなかなか輩出させられない。

 真贋が見極められない事象や論理は"真たる信頼性"を得られにくく科学的とは考えにくくなってしまう。

https://itainews.com/archives/2026808.html

https://itainews.com/archives/2026810.html

 昨今はディープフェイクが問題化しつつあるが、同時に真贋の見極め方も進歩が促される。

https://twitter.com/zanengineer/status/1674597372775772160?s=46&t=6MVYq5Ovmu_MXJ16l5mXpw

 何にしても倫理観は守られていた方が物事は進みやすい。https://twitter.com/mt_yamamoto_/status/1677277181163241475?s=46&t=6MVYq5Ovmu_MXJ16l5mXpw

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 話を戻すが、チビクワガタ属の出現は何処だったか考察はやや難しい。おそらくは白亜紀マダガスカルインド亜大陸が繋がっていた時代に其の辺りで出現したと予想するが、オーストラリアに分布のあるチビクワガタ属はいつの時点で侵入があったのか。プレートテクトニクスについて蓋然性の高い仮説や、南米大陸ニュージーランドにはチビクワガタ属がいない事を考えてみると大体の予想は出来てくる。

 インド亜大陸からインドネシアを伝った北ルートを使ったのか、はたまたインド亜大陸から(南極大陸を伝った?)オーストラリアへの南ルートを伝ったのか、種によって移動経路が違ったのか。未だ見当を付けにくい。

http://www.theperthexpress.com.au/contents/special/vol92/p2.htm

 チビクワガタ類の種分化は面白い。いわゆる隠蔽種の様に、外形差が殆ど出ないのに交尾器の変化は種により激しい。交尾器の形態変化は種分化を促すようになっているようだが、其れはつまり別種とは子孫を残せない上に生態系内の競合を引き起こし生物集団の生存に対する不利を齎す事をあらわす。成る程そういう方向の進化でも生き残っているという事は、淘汰圧に耐えて残る"特に生存を有利にする訳ではない形の変化"もあると理解させてくれる。

 生物分類群の分化にも深く関連する"進化論"を考えるなか、"生物がどうやって身体の内外の環境差を維持しているのか"結構気になって調べていた事がある。生物は人間が袋に液体を入れて作った訳ではない。

 大学で生物学を専攻にすれば遺伝学だけでなく分子生物学も習うようになるが、残念ながら私の受講した教論では確信的な情報を得るには手掛かりすら得られなかった。こういう話は大量にある論文の中から一番参考になるものを探し出さないといけなかったり最早自分で実験しなければならなくなるが、まぁ学生風情には教授の手助けがあっても難易度の高い作業で、結構苦心して勉強した覚えがある。教科書を鵜呑み出来れば悩まなかったかもしれないが、教科書の文章も学生向けとはいえ恣意的な表現も多い。

 悩ましかったのは"進化"の現象について再現実験は方法すら思いつけなかった事で、いまの技術で観る事の可能な範囲で調べるしかなかった。

 全ての生物を構成する組織として細胞がある。しかし此の細胞というものが何をしているのかは学校で知れる話は微々たる量で、実際には様々膨大な役割や分担の機能がある。

 細胞の構造には中学校の教科書で習うような単純な浸透圧の話等だけでなく、電気的・イオン濃度勾配の作用もあって、其れを理解するには物理学の履修も必要になってくる。其の前提として必要な物理学の知識は学校では教わらないし、大抵の書籍を読んでもどれが正解なのか分からないくらい解釈の表現や仕方がバラバラだった。

 此れについて私自身、全く道理の通った理解を得られたのは結構後だった。詳しくは此処に書ききれないので省略するが確定した知見として一般的である。

、、、、

 例えば進化の不思議を考えるとき、私はよく"イオンチャネルの凄さ"を思い浮かべる。

https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%8D%E3%83%AB

 "遺伝子"も割と話題にされやすいが、其方はどうも未知の要素が多過ぎて法則外での解釈が散漫としやすい。大学等では此の"イオンチャネル"について大した話を聞く機会があまり無いものの、実際には物凄く面白い研究が沢山ある。

 "イオンチャネル"というミクロサイズの膜タンパクについては膨大な知見があるので、短い簡単な文章では其の感動を表現するのは難しくあるが、教科書やインターネット上にある解説サイトから"何となくのシンプルな理解"は、遺伝子機序に比べればずっと容易と考えられる。あらゆるバイオインフラで利用され、関連するノーベル生理学・医学賞も多数ある。

https://www.brh.co.jp/research/formerlab/miyata/2006/post_000002.php

 イオンチャネルが分布する細胞膜はリン脂質二重層で構成され、細胞膜は知見にある全ての細胞で8~10 ナノメートルの厚みであるとされる事もなかなか面白い。既知の地球上生物はリン脂質二重層以外の構造様式は採れていないという事らしい。細胞膜を被覆する細胞壁等の別な組織があれば全体の厚みは変わるが、"細胞膜"は構造に絶対的に安定した規格が存在するのだと。

 そしてそんな構造に、更に"原始的な生物がどうやって獲得したんだろう?"と驚くべき精密な働きをするイオンチャネルが散在し、其の自然が創り出したナノマシンの個数量や種類の構成は細胞毎に遺伝子がメインで制御していると考えられている。原初生物の時代に偶然得られたイオンチャネルを遺伝子が情報を読み取り細胞分裂しても失われないようなシステム化がなされる。全く自然界で起きた事などとは信じられないくらいに物凄いシステムである。

 イオンチャネルは、各種イオンの電気化学的勾配を利用したあらゆる機序を生体内で可能にし、そういう機序があらゆる生物で様々な生命活動を可能にし、我々ヒト種を含む動物の五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)を感覚する役割、また様々な行動を引き起こす上で重要な役割の一部になってたりもする。つまり"我々の身体からイオンチャネルを除くと生きてはいけなくなる"と断言出来るくらいに重要なものなのである。

https://wired.jp/2017/05/09/how-life-began/

 イオンチャネルの凄さというのは、人間が作ったものではなく、人間には模造する事すら無理難題で、遺伝子操作で色々いじるしかない事にもある。つまり全く自然に出来た構造で、構成の規格も生物が自然に安定させたと解る。此れは"偶然の積み重ね"が如何なる結果を齎したか、進化を考える上で大変良い実例と考えられる。未知な事も少なからずあるが、分かっている形や役割を観ても誰かがわざわざ置いていったかのような精密な構造で、其れ等が人の手を借りずに自然に発生したなんて本当に驚くばかり。

https://academist-cf.com/journal/?p=11032

 他、遺伝子塩基配列を構成するにも水素結合、様々な生体維持をするにも静電気力などは利用されており、我々を含め全ての生物は電気的な要素にも支配されて生きながらえる事が可能になっている話は最早科学的常識である。

 私達が地球上で快適に暮らせているのも、地球を覆うオゾン層の他にヴァン・アレン帯なくしては為し得ない。最初にDNAが作られたのは電磁放射線による影響とされ、それから数十億年もの間に無限に行われた自然界イベントの後にやっと動物が脳を獲得する。我々が何か頭を使って考え出すよりも、ずっと昔から我々の素体は創られてきたと考えると、それだけで進化の謎に対する答えが僅かに垣間見える。

 しかし、そうなると"電気とは何か"という所にも話は繋がってゆく。電気等になれば、電流、電圧、電子の作用等と分子や原子レベルの"時間や場"に関する物理法則の話にもなってくる。そして其の物理法則は相互とは言え要素ごとにはとてつもなく一方向的な作用で埋め尽くされる。

 "光合成等の量子レベルの生物機序がどうなのか"など未知な事が多い生物現象を物理学的に解釈する事は簡単では無いが、生物現象が物理法則の内にあるのは確かな話である。

https://www.gohongi-clinic.com/k_blog/9074/

https://answers.ten-navi.com/dictionary/cat04/3071/

 あらゆる数多の生物系統が、此れ等の凄まじい物理法則の流れに対応し、永い自然史のなか淘汰進化と分化を行ってきたと考えると、私なんかは自然界の精密な現象に神秘性を感じざるを得なくなる。「神などと、、」と笑われそうなくらい、確かに人は錯覚や勘違いをしやすい。人間はそういう勘違いをしやすい人体構造である故に。しかし此の感覚が人間本来のものなのではないかとも考えては、自然の畏怖に面白みを覚えもする。

 調べる術は無いが、"物理法則"を支配する更なる上位の存在というものも、偶然以外にあるのだろうか。まぁ此処から先は極限なるロマンの世界。